Artists in Residence Program in SUMISO part I [ sizing ]
ディレクター 永原達哉

 
朝、目が覚める。夜、家へ戻る(朝、戻る。でも結構ですが)。先ずあなたの視界に入るのは何ですか?と尋ねられたら即座に浮かぶものは何でしょう?それは意図的に見るのですか?それとも無意識にそれを見るのでしょうか?もしくは“う〜む?”と考え込んでしまうでしょうか?
・・・これは別に精神心理学的 “メタファー”ではなく、皆さんの日常の生活の一片としてお伺いしたのです。なぜこのような質問を冒頭でしたのかと言うと、あなたが日常目にするモノの大きさ、色、配置、そしてそれらの間に存在する空間、また部屋全体の大きさ、光が射す方向や、その強さなどすべてがあなたの日常の感覚にどう作用しているのかを再確認して欲しかったのです。あなたにとっては“普通”に存在するこれらは実は“自己解釈”の中で処理されているかもしれません。つまりモノの大きさや、配色感覚、そして部屋が持つ広さや光度に対する感覚はあなたの日常生活の繰り返しによって、新たに問題視することが少なくなり、それらを内面に持つ“錯覚の定規”によって“自己解釈”されているのだと思います。
今回はこの定規を使う行為を“sizing−サイジングー”と名付けます。我々の生活空間で存在するモノは“人間”と言う大きさを規範に作られています。1mや1kgが極めて科学的に正確な定規として存在していても、やはりモノの大きさは人間の持つこの“sizing”で判断されるのです。しかしすべての人間の“sizing”を網羅するわけにはいきませんので、限られた数内で“sizing”の統計を取り、それを基準値として利用するわけです。結果として科学的には全く同じ大きさのモノも、人が持つ“sizing”が作用して、違った大きさに見える錯覚に陥るのです。
さて、今回の“Artists in Residence Program in SUMISO partI ”のメイン・テーマとして、この“sizing”がどれだけ皆さんに影響を与えているかをこの“SUMISO”と言う倉庫を改装したスペースで検証して頂きたいと思います。部屋の区切られ方、天井の高さ、照明の配置、そしてその空間を流れる空気の動き・・・それらを先ずいくつかのワークショップを通じて体感して頂きます。“あなたの sizing”がこのSUMISOでどのように変化するか。
またあなたの作品自体にどのように作用するか。これらをここSUMISOで表現して下さい。また今回は他の参加者同士の“sizing”を感じて頂きながら参加者全員でこのSUMISOと言うスペースを共有するという意識も持って作品作りに取り組んで頂きたいと思います。“sizing”は人間だけのものではなく、自然と言う大きな流れに属しているすべてのモノのためにあることを再確認したいと思います。
 
 

[ sizing ]
ディレクター 永原達哉

 
我々の生活空間にあるモノの存在やその距離感は”人間”と言う大きさが規範になっています。1mmや1kgが極めて科学的に正確な定規として存在していても、やはりこれらは個々の人間が内に持つ独自の定規で判断されているのです。
今回はこの行為をsizingと称し、極めてニュートラルな存在であるSUMISOがレジデンス側のsizingと、見る側のsizingに、どう作用するのか?経緯も結果も興味深いものになることでしょう。